マーライオン。シンガー・ソングライター。
〈NIYANIYA RECORDS〉主催。またの名を「キング・オブ・前座」。
2年ぶりの新作『ばらアイス』。
素っ裸でど直球のひとりロックンロール・アルバム。
ただギターとうた、旋律と詩、それだけ。
2014年末から2015年頭にかけ、マーライオンは3か月連続で3作のアルバムを立て続けに発表した。
バンドとしてのアンサンブルを重視したカラフルな『吐いたぶんだけ強くなる』と『ボーイミーツガール』、イリシット・ツボイによるミックスも耳目を集めた異色のラップ・アルバム『マーtodaライtodaオォォォン!!!』以来のスタジオ作となる本作。大谷能生との共演イヴェントの模様を収めた実況録音盤『大谷能生とマーライオンat黄金町試聴室その2』を経て、『ばらアイス』は原点回帰したエレキギターの弾き語りアルバムとなっている。その結果、独特のユーモアやおおらかさも、なんとなくマイナー調で薄曇り。だが、それによってあらわになったのは、マーライオンの腹の底からあふれでた生々しい告白をいろどる繊細な豊かで直情的な詩情である。
20代半ばの恋愛にまとわりつく不安感やいびつさを溶けていくアイスにたとえた表題曲。LINEやSNSでのコミュニケーションの閉塞性を打ち壊してみせる“花言葉”や“スロウムード”。幼少期の記憶や学校という特殊なコミュニティをノスタルジーとともに振り返りながらもドライに描写してみせる“ひなまつり”。いつになく艶っぽい言葉で聴者を驚かし、見事な幕引きを見せる最終曲“ストーリー”。全9曲、17分。恋と生活と過去と現在にまつわるショート・ショート・ショート・ロックンロール・アルバム――『ばらアイス』はミニマルかつハードコアである。